交通事故で後遺障害が残った場合は、自賠責保険による後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
この等級に応じて、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益という後遺障害に対する損害賠償の金額が決まるので、いかなる等級が認定されるかは非常に重要です。
ここでは、後遺障害等級認定制度の概要、申請手続の流れ、適正な等級を得るためのポイントについて説明します。
1.後遺障害等級認定とは?
交通事による怪我の治療をしたけれど、改善されない症状が残ってしまった場合、これを後遺障害と言います。
後遺障害については、自賠責保険によって、その障害の内容と程度に応じて1級から14級までの後遺障害等級が設定されており、その等級に応じて後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の賠償がなされます。
例えば、後遺障害慰謝料(※)の場合、最高額は1650万円(別表第1、1級)、最低額は32万円(別表第2、14級)まで幅があります。
※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した自賠法施行令別表第1の1級1号の支払いについては、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した自賠法施行令別表第1の1級1号の支払いについては1600万円です。
後遺障害等級は、自賠責保険から支払われる金額を決める基準ですが、任意保険会社との示談交渉や訴訟で裁判所基準(弁護士基準)で賠償額を算定する場合にも、事実上、尊重されているため、自賠責保険の負担部分だけでなく、後遺障害に関する損害賠償額全体の金額に大きく影響します。
例えば、裁判所基準の後遺障害慰謝料は、等級に応じて2800万円(1級)から110万円(14級)までの段階があります。
2.後遺障害等級認定の申請方法の2種類
後遺障害等級の認定を申請する手続には2種類の方法があります。「事前認定」と「被害者請求」です。
「事前認定」とは、加害者の加入している任意保険会社が、被害者の同意を得た上で病院から診療記録等を取り寄せ、被害者が提出する後遺障害診断書と合わせて自賠責保険会社に提出し、審査を担当する公的な団体である「損害保険料率算出機構」の審査を仰ぐものです。
この事前認定は、資料の収集、申請書類、添付資料の作成を任意保険会社にお任せできるので、被害者にとっては手間がかからず、負担軽減となるメリットがあります。
他方、「被害者請求」は、被害者自らが病院から診療記録など取り寄せて、後遺障害診断書と共に自賠責保険会社に提出して、損害保険料率算出機構の審査を仰ぐものです。
自賠責保険は被害者保護を図る保険制度なので、被害者から自賠責保険に対して直接に賠償金の支払いを請求する権利を認めています。その手続きが被害者請求(自賠責法16条)であり、その一内容として後遺障害診断書を提出して等級認定を求めるわけです。
被害者請求の場合は、診療記録等を取り寄せたり、添付書類である事故状況の図面等の作成をしなければならず、手間がかかる点がデメリットです。
しかし、事前認定に任せた場合は、後遺障害等級が認定されても、任意保険会社との示談が成立しない限りは、自賠責保険の負担部分も含めて賠償金を受け取ることができないデメリットがあります。
他方、被害者請求を行えば、任意保険会社との示談が成立していない段階であっても、早期に自賠責保険からの賠償金を受け取ることができます。
したがって、示談成立を待たずに賠償金の一部を受け取りたいと希望される場合は、被害者請求を行うことにメリットがあると言えます。
3.等級認定手続きの流れ
等級認定手続の流れをご説明しましょう。
・これ以上の治療をしても症状が改善されないと判断される場合は症状固定となり、担当医師に後遺障害診断書を作成してもらいます。
・事前認定の場合は、後遺障害診断書を任意保険会社に提出します。
・被害者請求の場合は、後遺障害診断書とともに診療記録、申請書、添付書類などの必要書類を被害者自らが準備して、自賠責保険会社に直接提出します。
・自賠責保険会社は、受け取った後遺障害に関わる資料を損害保険料率算出機構に送ります。
・損害保険料率算出機構は、提出された書類による書面審査で後遺障害等級の審査を行います。
・損害保険料算出率機構の認定結果は、「後遺障害等級認定票」という書類で自賠責保険会社に送付されます。
・この後遺障害等級認定票は、自賠責保険会社を経由して被害者に送付されます。認定票には、等級が認定された場合には何級何号に該当するか、認定した理由が記載されています。後遺障害と認められない「非該当」の場合も、その理由が記載されています。
4.適切な等級認定を得るためのポイント
適切な後遺障害等級を得るためには様々なポイントがあり、ここではいくつかをご紹介します。
(1)検査漏れに注意
例えば、むち打ち症での首、肩、腕の痛みは、MRIやCTなどの画像所見で異常が確認でき、さらに筋力テスト、反射テストなどの神経学的な検査の結果も整合していれば12級の認定を得られる可能性が高くなります。
そこで、担当医師に後遺障害診断書を作成してもらう以前の治療の段階で、必要な各種検査をもれなく実施してくれるようお願いしておく必要があります。
(2)後遺障害診断書の記載に注意
後遺障害等級の審査は書面審査であり、担当医師が作成する後遺障害診断書の内容は非常に重要です。
後遺障害診断書には、被害者が感じている自覚症状のすべてを、もれなく記載してもらう必要があります。
被害者は医師に対する遠慮などから、痛みを感じていても、症状を訴えることを遠慮してしまう場合がありますが、それでは適正な等級認定を受けることはできません。書面審査である以上、記載されていない症状は存在しないのと同じだからです。
また、痛みの内容も、どのような痛みで、どのような支障が生じているのかを訴えて、記載してもらうことが必要です。
例えば主婦であれば、「痛くて洗濯物を物干し竿にほせない」、「フライパンが持てないので、料理ができない」などの具体的な内容を記載してもらうべきなのです。
(3)通院の仕方にも注意
通院の仕方もポイントのひとつです。
例えば、次のような通院は問題です。
- 事故から相当期間経ってから初めて整形外科を受診した
- 通院の頻度が、月に2~3回とあまりにも少ない
- 治療を途中で中断してしまい、期間をあけて、また治療を再開した
このような場合は、通常の治療経過と異なるために、事故による後遺障害と認めてもらえなくなる可能性があるのです。事故にあったならば、すぐに病院で受診し、定期的に通院を継続して、勝手に中断しないようにする必要があります。
(4)適切な後遺障害等級を得るポイントは、弁護士のサポートを受ける
以上は、適切な後遺障害等級認定を受けるためのポイントの一部ですが、ほとんどの被害者の方は、交通事故の被害にあうのは初めてですから、通院の仕方ひとつとってもどのようにすれば良いのか、大変な不安を感じておられるでしょう。
交通事故の被害にあってから、できるだけ早いうちに、交通事故の経験豊富な弁護士に相談すれば、このような今後のポイントについても、アドバイスを受けることができ、安心して治療を進めることができるでしょう。
5.交通事故の後遺障害は、当事務所にお任せください
当事務所は、交通事故事件を数多く担当してきた実績があり、より適切な後遺障害等級認定を得るためのノウハウを蓄積しています。
後遺障害等級認定は、是非、当事務所にお任せください。