交通事故の傷害でもっとも多いのがむち打ちです。

本人には辛く深刻な症状なのに、自覚症状しかない場合も多く、後遺障害と認定されることが難しいケースが多々あります。

むち打ちが後遺障害となるためのポイントを解説します。

むち打ちに対する後遺障害等級

交通事故の強い衝撃で、首や肩などに痛み、痺れなどの症状が出るのが「むち打ち症」です。頚椎捻挫、頚部挫傷、外傷性頚部症候群などの診断名となります。

むち打ちの等級審査の3種類

むち打ちで後遺障害の等級認定が申請された場合、自賠責保険の対応は、次の3つに分かれます。

  1. 12級13号(局部に頑固な神経症状を残す場合)を認定する
  2. 14級9号(局部に神経症状を残す場合)を認定する
  3. 後遺障害「非該当」として後遺障害であることを認めない

この3つの対応によって、損害賠償額に大きな差が生じます。

逸失利益の違い

逸失利益の基礎となる労働能力喪失率は、12級が14%、14級は5%です。非該当となれば0%です。

ごく単純化した計算例を示しましょう。

被害者の年収500万円、労働能力喪失期間10年間(ライプニッツ係数7.722)とした場合

  • 12級:500万円×14%×7.722=540万5400円
  • 14級:500万円×5%×7.722=193万0500円
  • 非該当:0円

実際には、14級の場合は、労働能力喪失期間は長くても5年程度しか認めてもらえないケースが多いので、これによって計算すると次のとおりとなります。

  • 14級:500万円×5%×4.329=108万2250円

実に、12級と14級では430万円以上の差がついてしまいます。

慰謝料の違い

後遺障害慰謝料の相場金額(弁護士基準による)は次のとおりです。

  • 12級:290万円(うち自賠責保険の負担額93万円)
  • 14級:110万円(うち自賠責保険の負担額32万円)
  • 非該当:0円

これも等級によって大きな差があります。

むち打ちの等級認定のポイント

12級のポイント

12級と認定されるには、症状の存在が他覚的に証明できることが必要です。

これは事故による身体の異常から症状が生じていることを医師が医学的見地から判断できるということです。

そのために、次の諸要素が判断材料となります。

  • レントゲンやMRIなどの画像所見から、症状の原因となる神経の損傷などが認められるか
  • 腱の反射作用や筋力の低下、筋肉の萎縮といった神経学的な異常所見が認められるか
  • 被害者の訴える症状と画像所見、神経学的所見が整合するか(例えば、損傷した神経が支配する身体の部位とは異なる部位に痛みやしびれが生じているときは整合していません)

14級のポイント

14級と認定されるには、症状の存在が医学的に説明可能であることが必要です。

これは他覚的所見がなくとも、交通事故を原因として症状が現れていると説明しても医学的におかしくはない場合です。

ポイントは、症状の一貫性と連続性です。

むち打ちは、事故直後から数時間の段階が最も症状が重く、その後、治療を継続することで改善されていきます。これが医学的にみて通常の治癒経過です。

ところが、事故から相当な期間が経過してから症状が生じたり、治療の途中から当初はなかった新たな症状が生じてきたりした場合は、通常の治癒経過とは異なっており、医学的には説明がつかないとされてしまうわけです。これが症状に一貫性が欠ける例です。

また治療をやめて相当な期間が経過して、治療を再開し、頻繁に通院するようになったような場合も、医学的に説明がつきません。治療の進展と共に、通院頻度は低下するのが通常だからです。これが連続性を欠く例です。

要するに、これらの場合は、医学的には不自然、不合理であって、交通事故による症状ではないと疑問視されるケースと言えます。

このようなケースでは非該当とされてしまい、14級も認定されない結果、自賠責保険からは、逸失利益も後遺障害慰謝料も支払われなくなってしまいます。

むち打ちで後遺障害認定を得るために必要なこと

むち打ちで後遺障害の認定を受けるために、どのような点に留意するべきなのでしょうか。

必要な検査を尽くしてもらうこと

他覚的所見となる各種の検査が適切に実施されているかどうかが大切です。

特に重要なのは、X線、MRI、CTによる画像撮影ですが、反射検査、筋電図検査、筋力検査などの神経学的検査が尽くされているかどうかもポイントです。

このような検査が不十分なら、等級認定の申請前に、検査の実施を医師に依頼する必要があります。

自覚症状をもれなく伝えること

痛み、しびれ等の具体的な症状は、もれなく医師に訴えて記録に残してもらうことが必要です。等級認定は書類審査なので、医療記録に記載されていなければ、症状が存在しないのと同じです。

後遺障害診断書をチェックする

後遺障害診断書の記載内容は特に重要です。

各種検査の結果は、後遺障害診断書の「①精神・神経の障害 他覚症状及び検査結果」欄に記載され、具体的な痛みや痺れの感覚は「自覚症状」の欄に記載されます。

これらの記載内容をチェックすることで、検査の不足や自覚症状の記載漏れを発見することができます。

また、自覚症状の記載内容は、抽象的な記載では足りません。症状の部位、その内容を詳細に伝えて記載してもらうべきです。

例えば、単に「頸部」が痛いではなく、首のどの箇所が痛むかを特定します。さらに、ただ「痛い」だけではなく、「刺すように痛い」、「ピリピリ痛い」など具体的に伝えて記載してもらいます。

「寒くなると痛む」とか、「雨の日には痛むことがある」などの控えめな記載は避けるべきです。常時現れている症状でないと後遺障害と認定されない場合があるからです。

ほとんどの場合は、日常的に自覚している痛みが、気温の低下や気圧の変化で強くなるケースです。ですから、気温が低いときは格別痛むとか、低気圧のときは特に症状が重いなど、書き方を工夫してもらう必要があります。

通院の仕方にも注意が必要

事故直後から整形外科を受診し、定期的に通院を継続して、勝手に中断しないことが大切です。

また、痛みがあるのに当初遠慮して医師に告げず、途中から「実は別の症状がある」と訴えると、一貫性を疑われてしまう危険があるので、遠慮することなく、最初からすべての症状を医師に伝える必要があります。

むち打ちの後遺障害等級認定は当事務所にお任せください

当事務所では、むち打ちを始めとする末梢神経障害については、痛みや痺れのために、日常生活や仕事にどのような支障が生じているかを詳細に聞き取り致します。

例えば主婦の方であれば、腕が上がらないために物干し竿に洗濯物を干すことができなくなった、食器棚の高い場所に手が届かなくなったといった具体的な不便の内容が大切です。

仕事や家庭で介護をされている方ならば、被介護者に寝返りを打たせたり、上半身を起き上がらせることが困難になった、重い介護用具を運ぶことがままならないなどです。

このような具体的な不便、支障を聞き取ったうえで、これを後遺障害診断書に記載してもらうようにします。

逸失利益や後遺障害慰謝料は、まさにこのような不便、支障を強いられることに対する賠償なのですから、これが最も大切なことなのです。

当事務所では、このような後遺障害等級認定のための多くのノウハウを蓄積しています。

御相談いただければ、むち打ちの後遺障害で適正な等級が獲得できるように弁護士が全力でサポート致します。