交通事故による怪我の治療などのために仕事を休むことを余儀なくされ、収入が減ってしまう場合があります。

この減収は、休業損害として加害者に損害賠償を請求できます。

ここでは、休業損害の計算方法を解説いたします。

休業損害は「1日の基礎収入✕休んだ日数」

休業損害は、働けばもらえたはずの収入が、事故で休んだためにもらえなくなったというものですから、その計算式は次のとおりとなります。

休業損害=基礎収入(※)×休業した日数

※働けばもらえたであろう1日あたりの収入。

自賠責基準による基礎収入

自賠責基準による休業損害の基礎収入は1日5700円が原則です。

ただし、自賠責基準は休業損害額のうち自賠責保険から支出される金額を算定するものにすぎません。全体の休業損害額は裁判基準(弁護士基準)に従って計算されます。

そこで、以下は全て裁判基準に従った休業損害の計算方法を説明します。

サラリーマン(給与所得者)

(1)サラリーマンは事故の前3ヶ月間の平均収入で計算

給与所得者の1日あたりの基礎収入は、事故前の3ヶ月間の収入をもとに、次の計算式で計算します。

1日あたりの基礎収入=事故前3ヶ月間の給与の合計額÷90日

・事故前3ヵ月の収入には、通勤手当や住宅手当などの各種手当も含めます。また手取り額ではなく、税金・社会保険費を控除する前の金額を合計します。

(2)計算例

具体的な計算例をあげておきましょう。

例:交通事故日某年9月、25日間休業

事故前3ヶ月間の給与額6月27万円、7月31万円、8月28万円(合計86万円)

86万円÷90日×25日≒23万8889円(※)

※これは現在の保険実務の取扱いで、弁護士による示談交渉、訴訟においても、この計算方法を採用することが通例です。

ただし、これ以外の計算方法もあります(詳しくは、東京地裁民事27部武富一晃裁判官講演録「給与所得者の休業損害を算定する上での問題点」民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準・平成30年版下巻37頁参照)

(3)給与所得者の注意点

給与所得者の場合、源泉徴収票や給与明細によって事故前の収入が明確であるため、基礎収入の算定について保険会社と争いになる例は比較的少ないのですが、以下の点は注意が必要です。

①有給休暇

有給休暇を使用しても休業期間にカウントされます。事故がなければ、他の期間中に有給休暇を利用できたので、有給休暇を使用したこと自体が損害と言えるからです。

②賞与の減額、不支給

休業したためにボーナスが減額されたり、不支給となったときは、その損失も休業損害に含まれます。

③休業日数の認定問題

通院のために会社を休んだ場合、保険会社から、終日(全日)休む必要はなく、早退などによる半休で足りたはずと主張してくるケースもあります。

そのような場合、事案によっては(例えば勤務先と病院が非常に近接しており、かつ、病院での施術時間も短時間で済むようなケース)半休として0.5日の休業とカウントする場合もあります。

会社役員

(1)休業損害の対象は労働対価部分だけ

大部分の中小企業では、役員も従業員と一緒に現場で稼働していますので、取締役の報酬には役員としての報酬部分と従業員としての給与部分が存在します。

従業員としての給与部分は労働の対価ですから、休業で会社から支払われなくなれば休業損害と認められます。

他方、それ以外の役員としての報酬部分は役員を解任されない限り、休業していても得ることができる部分と考えられるので、仮に事故後に不支給となっても休業損害とは認められません。

(2)労働対価部分を区別する基準とは?

では、どのようにして、取締役の報酬を役員報酬部分と労働対価部分に分けるのでしょう?

その役員が、使用人兼務取締役で役員報酬部分と従業員給与の2本立てで支給していることが経理上明確な場合は問題ありません。

他方、そうでない場合には、これを明確に区別する基準はありません。このため保険会社は示談交渉において、役員というだけで、ほぼ一律に休業損害を否定します。

しかし、裁判例では、賃金センサスの平均賃金を参考にしながら、会社の規模やその会社における被害者の役割、金額の決定方法など諸事情を総合考慮して、全体の金額に占める労働対価部分の割合を算出します。

賃金センサスと同程度の金額しか認められないケースから、50%~90%を労働対価と認めるケース、100%を労働対価と認めるケースまで、ケースバイケースです。

そこで当事務所では、個別の事情を重視し、役員ではあっても、従業員と同様に現場や店舗で働いている実態、内容、時間などを丁寧に聞き取って主張し、役員の休業損害を勝ちとる方針を取ります。

個人事業主

(1)原則は前年の確定申告

商工業者、農林水産業者、自営業者、自由業者といった個人事業主(事業所得者)は、事故の前年の確定申告における所得をベースに基礎収入を算出します。

ただし、給与所得者と異なり、収入の変動が大きい場合があるので、その場合は事故前の数年分の確定申告所得をベースとすることもあります。

(2)過少申告の問題

個人事業主が税金対策のために過少申告をしていたとして、実は確定申告よりも収入が多いと主張することが多々あります。

しかし、この主張は通常は認められません。税金逃れをしていながら交通事故の被害を受けたときには権利を主張するという矛盾した態度に裁判官が納得しないことが多いためです。

(3)休業中の固定費

休業中の固定費については、その事業の維持存続のために必要やむを得ないものであることを条件として休業損害と認められます。

主婦・主夫(家事従事者)

(1)賃金センサス女子労働者平均による

家事従事者は現実には賃金を得ていませんが、家事労働を他人に依頼すれば対価が必要となりますから、家事従事者の働きにも経済的価値が認められますので、交通事故で家事ができない場合は休業損害の対象となります。

この場合の基礎収入は賃金センサスによって認定します。賃金センサスは厚生労働省が毎年調査、発表している賃金統計です。

主婦の家事労働の場合、具体的には、「第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均賃金」という数値を使います(最高裁昭和50年7月8日判決)。

これは全ての産業分野、全ての規模の企業で、学歴と年齢を問わず、女性の平均賃金を算出した数字です。平成29(2017)年の場合、年収377万8200円です。これを365日で割った1万0351円が一日あたりの基礎収入です。

保険会社は示談交渉において、被害者が主婦の場合、基礎収入を自賠責基準による日額5700円として提示してきます。

しかし、上に述べたとおり、適正な金額は1日1万円を超えています。保険会社の言いなりになると正しい賠償金を受け取ることができないことがおわかりになると思います。

(2)家事従事者がパートなどの収入を得ていたとき

主婦が、内職やパートタイマーなどで働いて収入を得ていたときは、賃金センサスと実際の収入を比較して、高い数字のほうを基礎とするのが実務です。

これは有職の主婦は、時間的な制約等から専業主婦と比較して家事労働が質量ともに劣るのが通常であり、特別の事情のない限り、家事労働と他の労働を合わせて一人前の労働分として評価するのが相当だからとされています(※)

※東京地裁民事第27部鈴木順子裁判官講演録「家事労働の逸失利益」(民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準2003年版・302頁)

(3)家政婦を雇った費用と休業損害は両方請求できるか?

家事ができなくなったために、費用をかけて家政婦を雇った場合、主婦の休業損害と家政婦の費用の両方を請求することはできません。家政婦の費用は、主婦が家事労働をできなかったための損害ですので、主婦の休業損害の中に含まれていると考えられるからです(※)。

(※)別冊判例タイムズ16号・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂4版「東京地裁民事第27部における民事交通事件訴訟の実務について」14頁

(4)家事従事者の休業日数の問題

保険会社は示談交渉において、被害者が主婦の場合、通院した日だけを休業した休業損害を主張することが多くあります。

しかし、いうまでもなく家事労働は通院していない日にも行われるべきであったはずです。

そこで、当事務所では、例えば被害者の方から、「フライパンを持つことができないので料理を家族に手伝ってもらっている」、「手の痛みで洗濯物を掴むことができない」などの個別の具体的な支障を丁寧に聞き取り、通院していない日でもあっても、毎日の家事労働ができなくなっている実態を明らかにし、適正な休業損害を勝ちとる方針をとっています。

休業損害は当事務所にお任せください

仕事を休んだ損害を請求する、非常に単純なことに思われますが、上に説明したとおり、その金額の計算だけでも、様々な要素を考慮しなければなりません。

当事務所では、休業損害の問題を含む多数の交通事故事件を解決した実績があります。

交通事故の休業損害でお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。