代表弁護士 林 伸彦 (はやし のぶひこ)

行政書士だとリスク大!交通事故問題は弁護士を選ぶべき理由

ネットでは、私たち弁護士だけでなく、多くの行政書士も、交通事故問題を手助けできると宣伝をしています。

交通事故の被害者からすれば、どちらに相談するべきか迷うかも知れません。

しかし、交通事故問題は弁護士を選ぶべきです。これには明確な理由があります。

弁護士と行政書士の職務範囲は異なる

私たち弁護士も、行政書士も、同じく国家資格による職業ですが、法律で認められている職務の範囲は全く異なります。

(1)弁護士が取り扱う法律問題に制限はない

弁護士は、あらゆる法律問題を担当でき、取り扱う事件に制限はありません。問題の解決手段も、法律相談から始まり、代理人となって示談交渉をし、訴訟代理人として調停を申し立て、訴訟を提起することができます。つまり本人に代わって最後まで事件を処理できるのです(弁護士法第3条1項)。

このような職務は特に弁護士に認められたものです。弁護士以外の者は、格別に法律で許された例外(※)を除き、具体的な法律問題について業務として法律相談に応じたり、代理人となって交渉を行ったりすることは罰則をもって禁じられています(弁護士法72条)。

※法務大臣の認定を受けた認定司法書士が行う簡易裁判所における民事事件、いわゆるサービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法)で認められた債権回収会社などがあります。

(2)行政書士は交通事故問題の対応に制限がある

他方、行政書士は、官公署に提出する書類や、その他の権利義務、または事実証明に関する書類を作成すること等、書類作成の代行等が本来の業務範囲です(行政書士法第1条の2及び3)。

したがって、具体的な交通事故事件について、法律相談に応じたり、書類を作成したり、加害者側と交渉したりする行為は、許された業務の範囲を逸脱しており、弁護士法に違反するものです。

実際に、行政書士が自賠責保険の被害者請求や後遺障害等級認定の異議申し立て手続等を受任した事案で、行政書士と被害者の契約は違法で無効とされた裁判例もあります(大阪高裁平成26年6月12日判決)。

このように交通事故問題において行政書士の対応には制限があります。

行政書士ではなく弁護士を選ぶべき理由

依頼者本人の利益という観点からも、交通事故問題は行政書士ではなく弁護士に委ねるべきであることはハッキリしています。

(1)弁護士は裁判の専門家

その理由は簡単です。交通事故問題が最終的に解決される場は裁判であり、弁護士は裁判の専門家ですが、行政書士はそうではないからです。

例えば、示談交渉では、加害者側の保険会社は、その内部基準に基づいて低い水準の賠償額を提案してきます。

しかし、私たち弁護士が代理人となって弁護士基準(裁判所基準)による賠償金を請求すると、保険会社はそれまでの低い賠償金を撤回し、増額に応じることがほとんどです。弁護士に訴訟を提起されてしまえば、結局、弁護士基準での賠償を裁判所から命じられることがわかっているからです。

私たち弁護士は、最終的な訴訟で予想される結論を念頭に置き、応じなければ提訴するぞというプレッシャーをかけ、保険会社を弁護士基準の土俵に引き上げることで、有利な賠償額を引き出すのです。

しかし、行政書士が弁護士基準を持ち出して交渉をしても、保険会社からすれば、示談に応じる必要はありません。行政書士は訴訟代理人にはなれないので、直ちに裁判を起こすことができないからです。

訴訟代理人となれない以上、示談がまとまらない場合は、「後は弁護士に依頼してください」となりますから、保険会社は実際に弁護士が出てきてから対応すれば良いのです。

「裁判という切り札」を持たない行政書士では、弁護士基準に基づく適正な賠償金を引き出すことは難しいのです。

(2)途中から弁護士に依頼することの不利益

結局、行政書士から弁護士に交代せざるを得なくなれば、それまでの交渉は無駄となり、解決までに余計な時間がかかります。

また行政書士に払った費用とは別に弁護士費用がかかりますから、費用も高くなってしまいます。

さらに、被害者が、これまで行政書士に説明してきた事故態様などの事情を、最初から弁護士に説明し直さなくてはなりませんから、二度手間となります。

(3)行政書士が問題のある行動をするケースも

また、行政書士の中には、自分が担当をはずれると報酬金を受け取れなくなるため、低水準でも保険会社の提案する金額で示談するよう薦める者もいると言われています。これでは、受け取ることができたはずの正当な賠償金を得ることはできなくなってしまいます。

さらに行政書士の中には、実際の裁判の場で通用するレベルの法的知識や訴訟実務の経験を備えておらず、法的に無理な主張をして保険会社を困惑させる者もいます。

強引な主張も、その時には依頼者にとって頼もしく映るかもしれませんが、それでは時間を浪費するだけで事件は解決しませんし、最終的に裁判所に認めてもらえなければ無意味です。

大切なことは、裁判所で通る主張とそうでない主張を的確に判断して交渉することです。

行政書士が担当していた事件を引き継ぐと、保険会社の担当者から「先生についていただき、ホッとしました」と言われることがあります。

早く解決したい気持ちは保険会社も同じです(そうでないと遅延損害金の出費がどんどんかさんでしまいます)。しかし、無理な主張には妥協できませんから、弁護士に交代し、正しい主張に基づく交渉を進めてくれることは、保険会社にとっても、ありがたい面があるのです。

交通事故問題なら当事務所にお任せ下さい

訴訟は、それなりに時間と費用がかかりますので、できるだけ示談交渉で、しかし、限りなく裁判と同様の弁護士基準に近い金額で和解することが依頼者の利益となります。

当事務所では、交通事故事件の豊富な経験から、弁護士基準を前提としつつ、訴訟まで提起しなくても保険会社が譲歩する賠償額の水準を判断できます。このため交渉に無駄な時間を費やすことなく、早期に解決することが可能です。

交通事故問題での相談先を迷っている方は、まず、当事務所の弁護士に御相談ください。