交通事故の後遺障害で、次のようなケースがあります。

  • 複数の障害が残ってしまった
  • 自分の障害は後遺障害等級表に定められていない
  • もともとあった障害が交通事故で重くなってしまった

このような場合の取扱ルールが、併合・相当・加重です。

併合、相当、加重とは?

併合・相当・加重の意味は、それぞれ次のとおりです。

  • 併合とは、2つ以上の後遺障害の取扱い
  • 相当とは、後遺障害等級表に定められていない後遺障害の取扱い
  • 加重とは、事故前にすでに障害があったときの取扱い

後遺障害等級表の仕組み

併合・相当・加重の意味を理解していただくには、前提として後遺障害等級表の基本的な仕組みを理解する必要があります。

それは、後遺障害等級表の「部位」、「系列」、「序列」です。

「部位」とは身体を解剖学的な観点から分類したものです。目、耳、鼻、口、神経系統、頭部・顔面・頸部、胸腹部臓器、上肢、下肢など、体の各部分の分類をさします。

後遺障害等級表では、この各部位ごと残った障害を、主に機能面に重点を置いた生理学的観点から35種類に分類しています。これを障害の「系列」といいます。

例えば、「上肢」という部位では、障害されている機能にしたがい、上肢を失った「欠損障害」と、関節の可動域に制限が残った「機能障害」を同一系列の障害とし、骨の変形が残った「変形障害」や、醜い傷跡が残った「醜状障害」を別系列として、計3系列に分けて後遺障害を定めているのです。

そして、同じく上肢の「機能障害」でも、その程度に応じて等級の上下があります。例えば、三大関節の2つが用を廃したときは6級で、関節の1つが用を廃したときは8級とされており、同一系列の障害に上下の関係が定められています。この上下関係を「序列」といいます。

併合の基礎知識

併合とは、「2つ以上の後遺障害の取扱い」と言いましたが、この場合の「2つ以上の後遺障害」は、異なる「系列」の後遺障害をさします。

系列の異なる2つ以上の後遺障害が残ったときの「併合」は、次のルールに従います。

後遺障害等級別表第2の「併合」基本ルール(※)
複数の後遺障害の等級 併合の原則
1級から5級の場合 重い方の等級を3つ繰り上げる
6級から8級の場合 重い方の等級を2つ繰り上げる
9級から13級の場合 重い方の等級を1つ繰り上げる
14級の場合 14級のまま

※別表第1の後遺障害(要介護)には適用されません。

注意:「みなし系列」について

併合を考える場合、「系列の異なる2つ以上の後遺障害」が残ったケースでも、次の同一部位の場合は、認定実務上、同一又は相関連するものと取り扱うことが合理的とされ、同一系列とみなされ、併合の対象となりません。これを「みなし系列」といいます。

  1. 両眼球の視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害
  2. 同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害
  3. 同一下肢の機能障害と足指の欠損又は機能障害

相当の基礎知識

後遺障害等級は、14段階137種類の後遺障害を予定していますが、当然ですが交通事故による全ての後遺障害を網羅できているわけではなく、等級表に記載されていなくとも救済するべき障害があります。

そこで等級表に記載されていない障害でも、記載されている後遺障害と同程度の障害と評価できる場合は、その後遺障害等級を準用する(その等級とする)取扱いとされています。これを自賠責保険では、「各等級の後遺障害に相当するもの」と表現するので、「相当」と呼んでいます。

例えば、味覚を失う「味覚脱失」、嗅覚を失う「嗅覚脱失」は、後遺障害等級表に定められていませんが、その障害の深刻さを考えれば、後遺障害として賠償対象とするべきです。

そこで、これらは神経障害ではないものの、神経障害に近似している障害として、「局部に頑固な神経症状を残すもの」(第12級13号)に相当するものと扱います。

加重の基礎知識

「加重」とは、事故前に既に後遺障害を持っていた方が、交通事故による新たな障害のために、後遺障害の程度が重くなった場合を言います。

既存の後遺障害が交通事故によるものか否かは無関係です。

加重の場合、今回の交通事故で該当する後遺障害等級の自賠責保険の金額から、既存の後遺障害が該当した等級の自賠責保険の金額を差し引いた金額が補償の限度となります。

例えば、片方の上肢の手関節(手首の関節)から先を失っていた方(この時点で5級に該当する障害)が、交通事故で、同じ上肢の肘関節から先も失ってしまったとき(4級に該当)は、4級の自賠責保険限度額は1889万円から、5級の1574万円を差し引いた金額が限度額となるのです。

併合、相当、加重は、実は難しい

これらの取り扱いの基本的な考え方は以上に説明したとおりですが、実際の取り扱いには多くの例外があり、弁護士であっても、交通事故事件を数多くこなし、熱心に研究した者でなければ、到底、理解できないほど複雑なルールとなっています。

例えば、併合にも、次のような例外があります。

右手の手首から先を失い、左手の肘から先も失ってしまったケースでは、本来、右手の障害は5級、左手の障害は4級ですから、併合の原則によって、重い4級を3つ繰り上げ1級となりそうです。

ところが後遺障害等級表では、「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」を1級としているので、右手の肘から先は残っているこのケースを1級としてしまうと、等級の上下関係である「序列」を乱してしまいうので許されないのです。このケースは2級にとどまると扱われるのです。

このような例外ルールが数多くあり、一般の被害者の方が理解することは容易なことではありません。

交通事故後遺障害の併合・相当・加重の問題は当事務所にお任せください

このように、後遺障害が複数ある場合の取り扱いは、交通事故事件の経験豊富な弁護士でなければ正しい処理が困難です。

交通事故の後遺症で、併合・相当・加重の問題でお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。